彼が居なくなった理由は分からない。
本当に本当に元気で明るい人。
体力もあるし。
仕事も好きな事やって。
彼女もいて。
趣味も充実してて。
なんで?
嘘でしょ?
だれもがこう言った。
まさか自らこの道を選ぶなんて、誰も、誰も想像できなくて、今でも信じられてない友達も多い。
家族もそう。職場もそう。
警察の人に言われた。
ご家族の方も、職場の方も、自殺と言うのは未だに信じられてないようで…。
彼が居なくなって2ヶ月たたないくらいの頃だったかな。
調書を作るために再度話を聞きに来た刑事さんが言ってた。
本当にそう。
元々メンタルが弱い訳でもないし。
今までも辛い事は沢山あったはず。
ボードで大怪我したり。
職場でも大怪我したり。
だけど全部笑い話になってた。
だから本当に信じられない。
誰もがそう思ってる。
彼が遺体で見つかって、家族に連絡が行った。
そして彼のアパートに捜索が入った。
そこで同じアパートに住む彼の友達が私の存在を知らせてくれたらしい。
職場に連絡があった。
私は休みだったから、店長が出た。
店長も信じられなくて、嘘ですよね?
そう言ったらしい。
あまりに信じられなくて、私の電話番号を教えられず、私から電話をかけるようにしてくれた。
店長からは彼氏の事で警察から連絡が来てるからかけて。
そう明るくない声で電話をもらった。
私がその時思ったこと。
仕事行きたくなかったから!!
昨日お酒飲んでたから!!
悩んで寝られなかったのかな!!
飲酒運転して事故起こしたのかな!!
誰かひいちゃったのかな!!
それとも喧嘩!!
そんな事を考えて電話をかけた。
そしたらね、あっけなかった。
遺体で見つかりました。
自殺と思われます。
だって。
は?
って思ったよ。
来てください。って言われて。
すぐ行きます。って言って。
車で1時間くらいの警察署。
聴取を受けて。
彼に会って。
もう動かない、話さない彼に会って。
今思い出しても胸が痛い。
だけどね。
みんなと違うのはね。
私は初めから自殺って事を認めてた。
警察から電話があった時点で、彼が悩んで何かした。
そう思ってた。
気づいてた。
何か異変に気づいてた。
みんなは信じてないのに。
そんなの私だけ。
彼が悩んでるの知ってたから。
仕事が大変で忙しいの。
仕事の電話も多かった。
数日前に寝られなかった。
そう言ってた。
朝になると少し弱みを見せてた。
多分彼なりの精一杯の弱音。
心配したよ。
支えたい。
そう思ったよ。
だけどね、
仕事から帰ってくると本当元気で。
一緒にボルダリングして。
夜遅くまでやってたよね。
笑って。楽しく。
帰る?って聞いても帰らないで。
楽しいんだよね。
これやってると本当ストレス発散。
そう言ってた。
だから安心してたの。
それに私の中に自殺っていう概念がなくて。
心配してたって言っても、職場で怪我しないかな?
とかそのくらいの心配。
(彼は現場仕事で、前にも怪我した事があったので)
だけどこんなことになって。
考えれば考えるほど、私には彼を助けられた。
それしか出てこなくて。
私だけが認めて。
多分衝動的だったのは間違いない。
元々、死にたい。と考えてた訳ではないと思ってる。
だけどあの日。
彼は居なくなった。
あの日私が隣にいたら。
彼が弱ってるのを知りながら。
勝手に大丈夫だろう。と思って。
いや、大丈夫だろうと思うほど重く考えてもいなくて。
彼を一人にした。
今までだってもちろんあった。
自分のアパートに帰る日はあった。
だけど、だけど。
あの日はダメだったんだ。
あの日だけは。
帰っちゃいけなかったんだ。
ああ、ごめんなさい。
生きていたかったよね。