親友
私には親友と呼べる友達がいる。
小学校から仲がいい。
同じ小学校。
同じ中学校。
同じ高校。
同じアパートに住み。
同じ部活。
同じ塾。
笑ってしまうほど一緒に過ごしてきた。
いつもバカな事言って。
お互いを褒める事なんてしないで。
いつも正直に。
そんな親友は約1年前に婚約、そして入籍した。
とても優しい旦那さんで。
幸せそう。
沢山お祝いもした。
嬉しかった。
その親友の結婚式が、彼が居なくなって約1ヶ月半後にあった。
友人代表のスピーチも。
招待状を貰った時は、まさかこんな事になるなんて思ってもいなかった。
正直出ようか悩んだ。
幸せを見るのは辛かった。
それに、彼の事を知らない他人の顔を見る事が嫌だった。
泣きたくなるかもしれない。
笑えないかもしれない。
だけど、彼女の結婚式だったから出たかった。
それは本心。
それに。
彼女は彼が居なくなってから、私を支えてくれた。
特に何か言葉をかける訳ではなかったけど。
辛くてどうしようもない時、彼女の家に行って居た。
私も泣く訳でもなく。
ただ家に居たくなくて。
結婚式の準備もあるのに。
新婚旅行もあるのに。
いつでも時間を作ってくれた。
時には旦那さんを追い出してまで私を家に入れてくれた。
家では決して付けないテレビを彼女は付ける。
なんとなく流れるテレビが無音を解消してくれた。
優しい言葉なんてなかった。
励ましや同情、そんなものはいらなかった。
彼について聞かれたことはほとんどない。
それが本当に心地よかった。
実は彼が居なくなった日、私は彼女たちと居た。
彼を駅で見送って。
彼女たちと会っていた。
翌日も。
彼女たちがうちの実家に遊びに来て。
その途中で警察から連絡が来た。
あの後悔の日。
心から笑っていた最後の瞬間。
ちなみに結婚式には出た。
なんだかお葬式と重なって、やっぱり辛い時はあったけど。
だけど出席出来て良かった。
スピーチもした。
彼の告別式の友人の挨拶と重なった。
彼の友達はどんな気持ちであの場で話をしたのか。
想像しただけで涙が出る。
そんな彼女が妊娠した。
そう昨日報告があった。
ちゃんとおめでとう。って言えてたかな?
予定日は8月末。
彼が居なくなったのと同じ。
なんとも言えない感情が湧いてきた。
たぶんこれが彼女じゃなかったら。
私は逃げ出して居ただろう。
だけど大切な親友だから。
しっかりと、おめでとう。
そう言えたと思う。
帰りの車で泣いた。
たぶん羨ましかったのかな。
幸せになってく彼女が。
そしてその幸せを羨ましく思う自分に嫌気がさす。
胸がぎゅーっと痛い。